Agent Payments Protocol(AP2)とは?意味・仕組みをわかりやすく解説
2026.09.30

Agent Payments Protocol(AP2)とは、AIエージェントが人に代わって安全に支払いを行うために、Googleが2025年9月に発表したオープンな決済プロトコル(システム同士が通信するための共通の決まりごと)です。「AIに買い物を代行してもらう」時代を見据え、Mastercard・PayPal・JCBなど60社以上が参加して策定が進んでいます。
この記事では、AP2の意味や仕組み、混同されやすい関連プロトコルとの違い、日本の事業者が今から押さえておきたいポイントを、非技術者の方にもわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- Agent Payments Protocol(AP2)の意味と、Googleが提唱した背景
- AP2の仕組みと、ACPなど関連プロトコルとの違い
- 日本の事業者がAIエージェント決済に向けて今から準備しておきたいこと
Agent Payments Protocol(AP2)とは
Agent Payments Protocol(AP2)とは、AIエージェント(ユーザーに代わって自律的にタスクを実行するAIプログラム)が、ユーザーの代わりに安全に支払いを行うためのオープンな決済プロトコルです。Google Cloud公式ブログによると、2025年9月17日にGoogleが発表し、Mastercard・American Express・PayPal・Adyen・Coinbase・JCB・UnionPay Internationalなど決済・技術業界の60社以上が参加パートナーとして名を連ねています。仕様やドキュメントはAP2公式サイト(ap2-protocol.org)で公開されています。
AP2が目指すのは、次の3つを技術的に保証することです。
- 認可(Authorization):ユーザーが特定の購入をエージェントに任せたことの証明
- 真正性(Authenticity):エージェントからのリクエストが、ユーザー本人の意図を正しく反映していることの確認
- 説明責任(Accountability):不正な取引や誤った取引が起きた際に、責任の所在を明確にする仕組み
これまでの決済は「本人がボタンをクリックして購入を確定する」ことを前提に安全性が設計されてきました。AIエージェントが本人の代わりに購入操作を行うようになると、この前提が崩れてしまいます。AP2は、この新しい購買のかたち(一般に「エージェンティックコマース」と呼ばれます)に対応するための共通ルールとして位置づけられています。
なぜAP2が必要とされているのか
AIエージェントに買い物を任せる利用シーンが広がるにつれて、次のような課題が浮かび上がってきました。
- 本人性の確認が難しい:エージェント経由の注文が、本当にユーザー本人の意思によるものかを、加盟店やカード会社が判断しにくい
- 不正利用時の責任の所在があいまい:エージェントの誤操作や不正アクセスで意図しない購入が発生した場合、ユーザー・エージェント提供事業者・決済事業者のどこに責任があるのか整理されていない
- 各社が独自ルールを作ることでの分断リスク:主要なプラットフォームや決済会社がバラバラの仕様でエージェント決済に対応すると、事業者側は接続先ごとに個別対応を迫られ、エコシステム全体が分断してしまう
AP2は、こうした課題に対して業界横断の共通ルールを用意することで、決済手段(クレジットカード・デビットカード・リアルタイムの銀行振込・ステーブルコインなど)を問わず、金融機関・加盟店・ユーザーの三者が安心して取引できる土台を作ることを狙っています。
AP2の仕組み|「Mandate(委任状)」とは

AP2の中心にあるのが、Mandate(マンデート/委任状)という考え方です。Mandateとは、ユーザーがエージェントに何をどこまで任せたかを、暗号技術で署名した改ざんできないデジタル記録として残す仕組みのことです。主に次の2種類が使われます。
- Intent Mandate(意思委任状):ユーザーが最初にエージェントへ伝えた要望を記録するもの。例えば「気に入った緑色のジャケットが見つかったら、20%までの追加費用は許容して購入してよい」といった条件を記録する
- Cart Mandate(カート委任状):実際に購入しようとしている商品名・数量・価格を正確に記録し、ユーザーが最終確認・承認したことを証明するもの
購入の流れには、大きく2つのパターンがあります。
- リアルタイム購入:ユーザーがその場にいて、エージェントが見つけた商品をユーザー自身がCart Mandateで承認してから支払いが実行される
- 委任タスク(人が不在の購入):ユーザーが事前に詳しい条件をIntent Mandateとして設定しておき、条件を満たしたタイミングでエージェントが自動的にCart Mandateを作成し、支払いまで完了させる
AP2はGoogleが主導して始まった規格ですが、2026年4月には、特定の企業に偏らない中立的な業界標準として広げていくため、本人確認技術の標準化団体であるFIDO Allianceへ寄贈されました。あわせて公開された新しいバージョン(AP2 v0.2)では、先ほどの「委任タスク」にあたる仕組みが「Human Not Present(人が立ち会わない決済)」という機能として正式に追加されています。
AP2と混同されやすい関連プロトコルとの違い

2025年後半から2026年にかけて、AIエージェントによる決済・購買を支える規格が複数の企業から相次いで発表されており、名前が似ているため混同されがちです。代表的なものを整理すると、次のとおりです。
プロトコル | 主導企業 | 発表時期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
AP2(Agent Payments Protocol) | Google + 60社以上 | 2025年9月 | エージェントによる支払いの「承認・実行」に特化したレイヤー |
ACP(Agentic Commerce Protocol) | Stripe・OpenAI・Meta | 2025年9月 | 商品連携から購入委任までを一体でカバーする、より広い範囲の規格。Stripe公式ドキュメントで仕様公開 |
x402 | Coinbase(2026年4月にLinux Foundationへ移管) | 2025年5月 | HTTPの「402 Payment Required」ステータスコードを使い、ステーブルコインでの即時決済を可能にするプロトコル。x402公式サイト |
いずれも「AIエージェントが安全に支払いを行えるようにする」という目的は共通していますが、AP2は決済の承認・実行という工程に特化したレイヤーとして機能し、ACPは商品検索から決済委任までをより広くカバーする点、x402はステーブルコインなど暗号資産決済を主な対象とする点が異なります。2026年現在はまだ複数の規格が並行して整備されている「標準づくり」の段階であり、今後どれが主流になるか、あるいは相互に連携していくのかが注目されています。
日本の事業者が今から準備しておきたいこと
2026年現在、AP2は仕様の公開・実装検証が進んでいる段階で、日本国内で本格的に対応している決済代行会社・ECサイトはまだ限られています。焦って導入を急ぐ必要はありませんが、今のうちから次のような論点を押さえておくと、今後の対応がスムーズになります。
- 自社の商品・サービス情報を、システムから参照しやすい形で整備する:AIエージェントが商品を正しく認識するためには、価格や在庫などの情報がAPIなどを通じて機械的に取得できる状態になっていることが前提になる
- 主要プロトコルの動向を継続的にウォッチする:AP2・ACPなど複数の規格のうち、自社が関わる業界・決済手段でどれが採用されていくかを定点観測しておく
- エージェント経由の取引における不正対策・責任分界を検討しておく:エージェントが関与する注文をどう検知し、トラブル時にどこまでを自社の責任範囲とするか、社内での整理を始めておく
これらはいずれも、決済APIを通じて自社サービスに決済機能を組み込んでいる事業者であれば、既存の決済基盤の延長線上で対応できる部分が多いテーマです。
PAY.JPと決済APIの今後
PAY.JPは、決済APIを中心に、日本国内の事業者向けにオンライン決済の仕組みを提供しているサービスです。AP2をはじめとするエージェント決済向けの規格は現時点でまだ標準化の途上にあり、PAY.JPとして特定のプロトコルへの対応を表明しているものではありませんが、決済APIを提供する事業者として、こうした業界動向は継続的に注視しています。
決済APIの基本的な仕組みや、都度課金・定期課金・Webhookといった機能については、PAY.JP APIドキュメントで詳しく確認できます。これから決済機能の導入を検討している方は、【はじめにお読みください】導入をご検討中の事業主様へもあわせてご覧ください。
まとめ
- Agent Payments Protocol(AP2)とは、AIエージェントが人に代わって安全に支払いを行うためにGoogleが2025年9月に発表したオープンな決済プロトコル
- 中核となる仕組みは、ユーザーの意思とカート内容を暗号署名で記録する「Mandate(委任状)」
- ACP・x402など類似の規格も同時期に複数登場しており、2026年現在はまだ「標準づくり」の段階
- 日本の事業者は今すぐの対応を急ぐ局面ではないが、商品情報の整備や不正対策の検討など、準備できることから始めておくとよい